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熱中症だと思っていた体調不良。その正体は、10年間静かに進行したあの病気でした

2026.08.06

ここ最近、本当に厳しい暑さが続いていますね。
ニュースでも毎日のように熱中症への警戒が呼びかけられており、体調管理に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

先日、当院の外来に「どうもフラフラしてしんどい。お腹も壊してしまって、体重も減った。これって熱中症でしょうか?」と、非常にしんどそうな様子で受診された患者さんがいらっしゃいました。

ご本人は「ただの暑さによる体調不良(熱中症)」だと思い込んでおられたのですが、検査をしてみると、事態はまったく異なる、非常に深刻な現実をはらんでいました。

今回は、この患者さんの事例を通じて、私たちが陥りがちな「体調不良の自己判断」の危うさと、健康診断を受けることの本当の意味について、少しお話ししてみたいと思います。


「熱中症にしては不自然」——医師が直感した、1つの違和感の正体

その患者さんは、診察室に入ってこられた瞬間から、確かに強い倦怠感と脱水症状が見て取れました。
フラフラとした足取りで、お腹も下し、体がすっかり消耗しているご様子です。

ご本人は「最近急に暑くなったから、熱中症になって水分が抜けたのかもしれない」とおっしゃっていました。

確かに、熱中症でも倦怠感や脱水は起こりますし、それに伴って一時的に体重が減ることもあります。
しかし、自分はそのお話を伺いながら、ある「医学的な違和感」を覚えていました。

それは、患者さんのおっしゃる「体重減少」の中身です。

ここで医師として最も重要になるのは、「いつから、どのように体重が減ったのか」という時系列の問診です。

詳しくお話を伺っていくと、「今回のしんどさの間に急激に減った」のではなく、実は「この1年間でじわじわと5kg体重が減っていた」という事実が浮かび上がってきました。

自分はこの瞬間、頭の中で熱中症という診断名を脇に置きました。

なぜなら、1年という持続的な時間をかけて5kgも削ぎ落とされるように痩せていくのは、通常の熱中症による急性脱水では絶対に説明がつかないからです。

これは、体の中で何か「持続的な代謝の異常」が起きている明確なサインです。

医学的に考えると、糖をエネルギーとして細胞に取り込むための「インスリン」というホルモンが致命的に不足し、体の中の糖が使えなくなっている状態が強く疑われました。

糖がエネルギーとして使えないと、体は代わりに自分自身の脂肪や筋肉を分解して、なんとか生き延びるためのエネルギーを作り出し続けます。
つまり、本人は食べているつもりでも、体がじわじわと「飢餓状態」になり、消耗していくのです。

「これは熱中症ではなく、極めて重度の高血糖による脱水と代謝異常(糖尿病)かもしれない」
そう直感し、すぐさま緊急の血液検査と尿検査を指示しました。


「まさか自分が……」健診未受診の10年がもたらした、診察室の現実

検査結果が出てきたとき、数値を見た自分の緊張感は一気に高まりました。

そこに並んでいたのは、一般的な治療基準を遥かに超えた、極めて重度な糖尿病を示すデータでした。
尿から多量の糖が漏れ出し、それに引っ張られるようにして体内の水分が根こそぎ奪われている状態です。

いつ急性増悪や深刻な合併症による命の危機(ケトアシドーシスなど)が訪れてもおかしくない、まさに砂上の楼閣のような危険な状態でした。

「糖尿病ですね。しかも、かなり重度です」

そう検査結果をお伝えしたとき、患者さんは一瞬、言葉を失って茫然とされていました。

「まさか自分が糖尿病だなんて、信じられない……」

その表情には、激しいショックと、目の前が真っ白になっているような戸惑いがありありと浮かんでいました。
それもそのはずです。ご本人にとっては「ちょっと夏バテして熱中症になった」くらいの認識だったのですから、突如として突きつけられた重病の事実に心が追いつかないのは無理もありません。

しかし、なぜこれほどの状態になるまで気づけなかったのでしょうか。

理由はシンプルでした。
その患者さんは、「この10年以上、一度も健康診断を受けていなかった」のです。

10年という歳月は、自覚症状のない糖尿病が静かに牙を剥くには、十分すぎる時間でした。

当院はクリニックですので、通院での日常的な治療や生活習慣の指導を得意としています。
しかし、この患者さんの状態は、一時的に当院で薬を出して様子を見るような猶予はありませんました。すぐにでも入院施設のある大病院で、持続的な点滴治療やインスリン導入などを専門的に行う必要があります。

自分は、ショックを受けている患者さんに対し、できるだけ丁寧に、しかし医師として非常に毅然としたトーンで説明しました。

「非常に体が危険な状態です。急いで治療が必要ですので、今から専門病院にご紹介しますね。そこでしっかりと体を整えましょう」

そう説明し、その場ですぐに紹介状を作成し、専門の基幹病院へスムーズに引き継ぐ手続きを進めました。


「痛みがない」は「健康」ではない。音もなく血管を蝕む糖尿病の恐怖

今回受診された患者さんは、決して健康をないがしろにしたいと思っていたわけではないはずです。

ただ、「10年以上健診を受けていない」とおっしゃる方の多くに共通する、ある心理的な罠がありました。

それは、「特に痛いところもないし、しんどい症状もないから、自分は元気で健康だ」という思い込みです。
仕事が忙しく、毎日の生活に追われていると、どうしても「自覚症状がない」ことを理由にして、健診に行くのを後回しにしてしまいがちです。

しかし、ここには非常に大きな認識の誤解があります。

臨床医として、自分が最も強く世の中に伝えたい真実があります。

それは、「痛みや症状がないことは、血管への負担がないことを意味しない」ということです。

糖尿病をはじめとする多くの生活習慣病(高血圧や脂質異常症など)は、初期から中期にかけて、ほとんど自覚症状がありません。
「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれるように、全く痛くも痒くもないまま、血液中の過剰な糖分が、全身 of 血管の内壁をボロボロに蝕み続けていきます。

血管が傷つき、硬くなり、詰まりやすくなっていくプロセスは、あなたの意識の外側で、音もなく静かに進行します。

そして、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞、あるいは今回のような極端な急性増悪や失明、人工透析の導入といった不可逆的な「結果」として目の前に現れるのです。

痛みがないのは、体が「健康だから」ではありません。
ただ「血管が削られている痛みを、神経が感じていないだけ」なのです。

健診を10年間避けるということは、自分の体のブレーキが壊れているかどうかを、10年間一度も点検せずに高速道路を走り続けるようなものです。
どれほど運転技術が良くても、あるいは体感としてスムーズに走れていても、ある日突然、ブレーキを踏んだ瞬間に決壊してしまいます。


おわりに

「最近、なんとなく疲れやすいな」
「少し体がだるいけど、まあこの暑さのせいだろう」

そうやって、自分の体が出しているサインを「熱中症」や「夏バテ」という便利な言葉で覆い隠し、自己判断でごまかしてはいませんか。

もし、あなたが最後に健康診断を受けてから数年、あるいは10年といった空白期間があるなら、どうかその空白をそのままにしないでください。

健康診断は、あなたを叱ったり、悪い点数をつけて生活を厳しく縛るためのものではありません。
あなたがこれからも大切な家族や友人と長く元気に過ごすために、今の自分の状態を正しく知るための「年に一度の点検」です。

まずは怖がらずに、自分の体の現在地を確認することから始めてみませんか。
それが、10年後のあなたと、あなたを大切に思っている人々を守るための、最も確実で実用的な一歩になります。

いとせクリニックでのサポート

兵庫県尼崎市武庫之荘の「いとせクリニック」では、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の初期診断や治療・生活指導を行っています。

当院では、健診で異常を指摘されたものの「どこを受診していいかわからない」と悩まれている患者さんに対し、丁寧な問診と検査を行い、お一人お一人のライフスタイルに合わせた無理のない治療計画をご提案いたします。

また、精密な二次検査や即時の入院加療が必要と判断された場合には、近隣の基幹総合医療機関と速やかに連携し、適切な専門医へスムーズにご紹介できる体制を整えております。

「もしかして糖尿病かもしれない」
「長年健診を受けていなくて、自分の体の状態が不安だ」

そのようなときは、決して一人で抱え込まず、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

あなたの健康な毎日を、スタッフ一同、温かくサポートいたします。

TEL06-6438-1107

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