2026年4月から、高齢者の肺炎球菌ワクチン定期接種が、
「ニューモバックス®」から「プレベナー20®」へと変更になりました。
「変わった」とは聞いたけれど、正直よくわからない──
そういう方のために、「そもそも肺炎球菌って何?」というところから、
なぜ変更になったのか、どういった方に特に大切なのかを、
できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
「お孫さんからうつる?」 意外と身近な、肺炎球菌の話
まず、肺炎球菌とはどういった細菌なのか、基本的なところからお伝えします。
肺炎球菌は、主に気道の分泌物に含まれる細菌です。
くしゃみや咳などの飛沫を介して感染し、気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。
さらに重症化すると、菌が血液に乗って全身に広がる「敗血症」を起こすこともあります。
肺炎は現在、日本人の死亡原因の第5位とされています。
そして成人の肺炎のうち、1/4から1/3は肺炎球菌が原因と考えられているのです。
高齢になるほど感染しやすく、重症化しやすくなる──という点も、忘れてはいけないことです。
ひとつ、意外と知られていないことをお伝えすると──。
子どもたちは、症状がまったくないまま肺炎球菌を保菌していることがよくあります。
保育園や幼稚園など集団生活が始まると、
ほとんどの子どもが保菌していると言われているほどです。
ということは、元気なお孫さんと接する機会が多いご高齢の方は、
気づかないうちに肺炎球菌にさらされている可能性がある、ということでもあります。
また、肺炎球菌には90種類以上の「型」があります。
すべてをカバーすることは難しく、
だからこそ「どの型をどれだけカバーできるか」が、ワクチン選びの重要なポイントになるのです。
「1回で終わる」か「5年ごとに打ち直す」か──仕組みを知ると、変更の意味が見えてくる
肺炎球菌ワクチンには、大きく分けて2種類あります。
PPSVとPCVです。
PPSV(多糖体ワクチン)
PPSVは「肺炎球菌多糖体ワクチン」とも呼ばれます。
代表的なものが、これまで定期接種として使われてきた「ニューモバックス®」です。
このワクチンは、肺炎球菌の表面にある「莢膜(きょうまく)」という成分を体内に入れることで、
「この敵が来たら追い出してね」と免疫に覚えさせる仕組みです。
ただ、効果の持続期間が5年程度と比較的短く、5年ごとに再接種が必要でした。
「5年ごとに来てください」と患者さんにお伝えするのが、なかなか難しいところでもありました。
PCV(結合型ワクチン)
一方のPCVは「肺炎球菌結合型ワクチン」です。
莢膜の成分に「キャリアタンパク」を結合させたワクチンで、
PPSVがB細胞にしか働きかけないのに対し、
PCVはT細胞も活性化するといわれています。
その結果、より長期にわたる免疫効果が期待できるとされており、
原則として1回の接種で完了できるとされています。
そして今回の「プレベナー20®」
2026年4月からの定期接種ワクチンとして選ばれたのが、
このPCVに分類される「プレベナー20®(PCV20)」です。
プレベナー20は、以前のプレベナー13®に7つの血清型を追加したワクチンで、
合計20種類の型をカバーします。
ニューモバックスがカバーしていた血清型の範囲とほぼ同様でありながら、
免疫効果がより長く持続すると推定されています。
つまり、「カバーの広さはほぼ同等以上」でありながら、
「5年ごとの再接種が必要だった」という課題が解消された形です。
これは患者さんにとって、かなりうれしい変化ではないでしょうか。
より広く、より長く。「1回で完了」が定期接種の新スタンダードになった理由
では、なぜプレベナー20が定期接種に選ばれたのでしょうか。
いくつかの理由が考えられます。
まず、安全性と有効性のデータが蓄積されていることです。
プレベナー20は、新たに登場したばかりのワクチンではありません。
小児の定期接種として先行して導入されており、
多くの子どもたちへの接種実績がすでにあります。
そのデータをもとに、高齢者への適用が広がった形です。
次に、カバーする型の数・効果の持続性・利便性のバランスです。
20種類の血清型をカバーし、T細胞も活性化することで長期の免疫が期待できる。
しかも追加接種は原則として不要。
この「広さ」「長さ」「手間の少なさ」のバランスが、
現時点での定期接種ワクチンとして選ばれた背景にあるのではないかと思います。
そして、費用負担の軽減という点も大切です。
定期接種になることで、自費接種と比べて費用が大幅に抑えられます。
金銭的なハードルが下がることで、より多くの方が接種しやすくなる──
これはとても意義深いことだと感じています。
年齢が上がるほど感染・重症化リスクが高まるため、
65歳以上のご高齢の方には広くお勧めしたいワクチンです。
加えて、以下のような基礎疾患がある方は、特に積極的にご検討いただければと思います。
- ・心筋梗塞や心不全などの心臓疾患をお持ちの方
- ・喘息やCOPD(肺気腫)などの呼吸器疾患をお持ちの方
- ・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害がある方
こういった方々は肺炎球菌感染症が重症化しやすいとされており、
予防の恩恵がより大きいと考えられています。
まとめ――「理解してから打つ」ことが、一番の安心につながる
ワクチンに対して「怖い」「よくわからない」という気持ちを持つ方がいることは、
とても自然なことだと思います。
ただ、内容を理解したうえで接種するかどうかを判断することが、
最も安心できる選択につながるのではないでしょうか。
今回の変更のポイント
- ・2026年4月から、高齢者の定期接種ワクチンが「ニューモバックス®」→「プレベナー20®」に変更
- ・プレベナー20は結合型ワクチン(PCV)で、20種類の血清型をカバー
- ・従来より免疫効果が長く続くと推定されており、原則1回で完了
- ・定期接種になったことで費用負担も軽減
尼崎市では
- ・65歳の方
- ・60歳以上65歳未満の方で、心臓・腎臓・呼吸器及びヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の身体障害者手帳1級所持者を対象に定期接種が行われます。
・費用は5,500円です。
予防接種券(ハガキ、裏面が紫色)を誕生月の月末に送られてきますので、ハガキが届いたらお電話でご予約ください。
