こんにちは。いとせクリニックです。
普段、私は毎日患者さんを診察し、ご症状に合わせたお薬を処方しています。喉が痛い患者さんには鎮痛剤や、症状に合った漢方薬を。これは医師としての日常です。しかし、「自分が毎日処方しているそのお薬を、自分自身が患者となって飲んでみる」という経験は、実はそう多くはありません。
もちろん風邪を引いた時には薬を飲むこともありますが、こと「漢方薬」となると、知識として「こういう症状にはこれ」と処方してはいるものの、自分自身の体で生の効き目を実感した経験は、案外少ないものです。
今回は、そんな私自身が患者となり、普段何気なく処方しているある漢方薬を試してみた結果、驚がくしたというお話をしたいと思います。
治らない喉の痛みと、自ら志願した「いつもの漢方」
事の発端は、数日前から続く私の「喉の痛み」でした。
最初は「少し空気が乾燥しているかな」くらいに思っていたのですが、日を追うごとに痛みが増し、唾を飲み込むのさえ痛い状態になってしまいました。医者の不養生とはよく言ったもので、自分のこととなるとついつい我慢してやり過ごそうとしてしまうのですが、さすがに長引いたため、しぶしぶ内科を受診することにしました。
診察室に入り、医師に症状を説明します。いつもの自分と同じように淡々と問診をしてくれる先生に対し、私はあるお願いをしました。
「先生、こちらから希望して申し訳ないのですが、『小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)』を出していただけないでしょうか。」
小柴胡湯加桔梗石膏。非常に長い名前ですが、これは喉の腫れや痛みに処方される代表的な漢方薬の一つです。
実は、私は日々の診療の中で、喉の痛みを訴える患者さんにこの漢方薬をよく処方しています。「喉が痛い」という訴えに対して、選ばれる定番の一つだからです。
しかし、内心こう思っている患者さんも多いのではないでしょうか。
「ただの粉薬で、本当に即効性があるの?痛みを止めるならロキソニンの方が早いのでは?」と。
実のところ、私自身も「効く」という知識はあるものの、どれほどの早さで、どんな風に効くのかを、自分の体を通じた感覚として持っていませんでした。だからこそ今回、自分が本当に喉が痛いこの絶好のタイミングで、いつも出しているその漢方薬を自ら希望したのです。「実際にどれくらい効果があるのか、確かめてみたい」という好奇心が背中を押しました。
飲んで数十分での劇的変化。「こんなにスパッと効くの!?」
処方箋をもらって薬局で受け取り、さっそく内服してみました。
粉薬を口に含み、水で流し込みます。独特の苦味と少しの甘みが混ざった味が広がります。
「まあ漢方だし、明日くらいに少し痛みが和らげばいいかな……」
そんな風にたかをくくっていましたが、内服して数十分後、驚くべき変化がありました。
それまで常に喉の奥にこびりついていた「いがらっぽい違和感」が、いつの間にかスッと消えているのです。唾を飲み込んだ時に感じていたチクチクとした鋭い痛みも、明らかにトーンダウンしていました。
痛みが完全にゼロになったわけではありませんが、「あ、楽になった」と明確に自覚できるレベルで、喉の強張りが取れていくのを感じました。
「えっ、こんなにスパッと効くの……!?」
正直なところ、驚きました。西洋の鎮痛剤とは違い、漢方は体調を底上げしながらゆっくり効くというイメージを持たれがちです。しかし、こと「小柴胡湯加桔梗石膏と喉の痛み」という組み合わせにおいて、その効果は想像以上に速く、私にとっては劇的でした。
今まで多くの患者さんに「喉の痛みに効きますよ」と処方してきましたが、これほどダイレクトに実感が湧くものだとは、自分自身が患者になるまで本当に理解できていなかったのだと実感しました。少し反省です。
「処方する側」が「処方される側」になって見えたこと
この体験を通じて、私は大切なことに気づかされました。
「知識として知っていること」と、「体を張って実感すること」は、全く別次元であるということです。
医学書を読みガイドラインに沿って処方するのは、医師として当然の第一歩です。しかし、実際にその薬が口の中でどんな味がし、食道を流れるときにどう感じ、そして数十分後に体がどう変わるのか。その「生々しい一次情報」を持っているかどうかで、患者さんへの説明の説得力は全く変わってきます。
これまでの私は、「喉の痛みに効くお薬を出しておきますね」と、どこか教科書通りの説明にとどまっていたかもしれません。しかし今の私なら、こう言うことができます。
「この漢方、私も先日喉が痛い時に飲んだんですが、飲んで数十分ですごくフッと楽になったんですよ。少し独特の味ですが、試してみる価値は十分にあります。」
経験に裏打ちされた言葉は、患者さんの不安を和らげてくれる一つの力になるのではないでしょうか。
長引く喉の痛みには、漢方という選択肢も
もし今この文章を読んでくださっている方の中で、「風邪のひき始めで喉が痛い」「鎮痛剤を飲んでも、なんとなく喉のイガイガが残ってスッキリしない」という方がいらっしゃれば、「漢方薬をお願いできますか」と主治医の先生に相談してみるのも良いかもしれません。
もちろん、全ての症状に小柴胡湯加桔梗石膏が良いわけではありません。一人ひとりの体質や症状によって最適な漢方は異なります。しかし、少なくとも私自身は今回、その予想以上の効果に救われました。何事もそうですが、一度自分で試してみる価値は十分にあると思います。皆様の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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