コロナ禍以降、胃腸の不調を訴える人が増えています
最近、「胃の不快感」「腹痛」「下痢」「便秘」などの慢性的な胃腸症状を訴える人が増えています。その原因のひとつとして注目されているのが、コロナウイルス感染や**コロナ後遺症(Long COVID)**との関係です。
この記事では、**腸と脳のつながり(腸脳相関)に異常をきたす病気「DGBI」**とコロナとの関連性について、わかりやすく解説します。
DGBI(腸脳相関障害)とは?機能性消化管障害との違い
**DGBI(Disorders of Gut-Brain Interaction)**は、「腸と脳の連携の乱れ」によって生じる消化器症状を総称したものです。以前は「機能性消化管障害(FGID)」と呼ばれていました。
Rome IV基準に基づく定義
2016年に発表されたRome IV基準により、DGBIは「単なる心の問題ではなく、腸と脳の生理的な相互作用の障害である」と再定義されました。
DGBIに含まれる代表的な疾患は以下のとおりです:
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機能性ディスペプシア(FD)
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過敏性腸症候群(IBS)
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機能性便秘(FC)
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機能性胸やけ(FH)など
コロナ禍でDGBIが増加?最新の国際調査結果
アメリカ・イギリスにおける大規模調査で、コロナ禍前後でDGBIの発症率が有意に上昇していることが最近報告されました1)。
主な調査結果(2017年 vs 2023年)
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DGBI全体の有病率:38.3% → 42.6%
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食道のDGBI:8.8% → 10.1%
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胃・十二指腸のDGBI:11.9% → 16.4%
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腸のDGBI:30.1% → 32.5%
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機能性ディスペプシア:8.3% → 11.9%
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過敏性腸症候群:4.7% → 6.0%
- いずれの症状もコロナ前後で増加を認めました。
DGBIのリスク因子(コロナ後)
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若年層、女性
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不安・抑うつの傾向
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コロナ感染回数が多い人
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感染時に腹痛・下痢などの消化器症状があった人
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Long COVID(コロナ後遺症)
特にLong COVIDを有する患者では、胃腸症状だけでなく生活の質(QOL)の低下や医療機関の受診増加も確認されています。
コロナ後遺症が胃腸に与える影響とは
コロナウイルスに感染すると、急性期だけでなく回復後もさまざまな後遺症が現れることがあります2)。
代表的なコロナ後遺症(Long COVID)の症状
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倦怠感、疲労
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関節痛、筋肉痛
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咳、胸痛、動悸
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嗅覚・味覚障害
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記憶障害、集中力低下、抑うつ
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下痢、腹痛、便秘などの消化器症状
これらのうち、胃腸症状は特に長期にわたって残ることがあり、DGBIとして診断されるケースも少なくありません。
胃腸症状が続くなら早めに受診を
「コロナにかかった後からお腹の調子が悪い」「ストレスで胃が痛い」「原因がはっきりしないけど下痢や便秘が続く」などの症状がある方は、DGBIの可能性もあります。
早期診断・早期治療が大切です
当院では、胃カメラ(内視鏡検査)・大腸カメラなどを用いて、胃腸の状態を詳しく調べ、必要に応じて腸と脳の関係に着目した治療をご提案します。
感染予防も引き続き大切に
コロナウイルス感染を防ぐことは、後遺症による胃腸症状を予防するためにも重要です。
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マスク着用
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手洗い・うがい
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十分な休養と栄養
を日常的に意識しましょう。
【ご相談はこちら】胃腸の不調が気になる方へ
胸やけ・胃もたれ・腹痛・下痢・便秘・お腹の張りなど、気になる胃腸症状がある方は、お気軽にいとせクリニックまでご相談ください。
参考文献
1. https://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(25)00623-8/abstract
2. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html