便秘の頻度
便秘は日常生活でよく経験するもので、男性の2.5%、女性の4.6%が便秘を訴えているといわれています。男女ともに加齢によって頻度が増加し、60代後半から便秘に悩む人が増え、70代前半までは女性に多く、70代後半以降は男性にも増加し男女共通の悩みになるようです。また、80歳以上では12%程度になり、85歳以上の超高齢者においては、25.4%とする報告もあり、高齢者全体の3割近くに便秘症状があることが推測されています。
便秘は生活習慣によって症状が左右されます。
便秘に効く食事
食物繊維
食物繊維とは
食物繊維は、人間の消化酵素で分解されない食物中の成分の総称で、主に野菜や果物、海藻などの植物性食品に含まれています。
便秘は食物繊維の摂取不足が原因であることが多く、食物繊維の摂取量を増やすことで症状が改善することをよく経験します。
快適な排便に必要な食物繊維の1日量は男性21g、女性18gですが、多くの日本人がこの目標に達していないのが現状です。
食物繊維は2種類あり、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分けられます。
水溶性食物繊維
ゲル状になり便の排出を促します。また腸内細菌によって分解され短鎖脂肪酸をつくる原料となります。短鎖脂肪酸は悪玉菌の増殖を抑え、腸内細菌叢を改善する働きがあります。
昆布、わかめ、こんにゃく、里芋、大麦などに多く含まれます。
不溶性食物繊維
便にボリュームを持たせることで蠕動運動を促し、便を排出しやすくします。
穀類、にんじん、ごぼう、さつまいもなどの根菜類、豆類、キノコ類に多く含まれます。
水
水分の不足も便秘の原因となります。水分が不足すると便が硬くなります。また水分を摂ることで便のかさが増し、腸管を刺激して蠕動運動が刺激されるため便が出やすくなります。特に寒い時期は水分の摂取量が減って便秘になりやすいため、意識的に水分を摂るようにしましょう。また暑い季節は脱水の予防のためにも水分をしっかりとるようにしましょう。なお、心臓の病気の方は水分を摂りすぎると心不全が悪化するため、主治医と相談してください。
油
魚や植物に含まれる不飽和脂肪酸は小腸で吸収されにくく、便を潤滑する役割があります。また、小腸を刺激して大腸の働きを活発化させるため、スムーズな排便に重要です。
オリゴ糖
オリゴ糖はブドウ糖などの単糖類が8−10個結合した糖類の総称です。ヒトの消化酵素で分解されず、悪玉菌のエサとはなりません。善玉菌のエサとなるため、摂り続けると善玉菌が優勢となり悪玉菌が減少します。
オリゴ糖製品、大豆、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、アスパラガスなどに含まれます。
プロバイオティクス
プロバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されています。いわゆる「善玉菌」のことです。人体の中でも特に腸は、複雑で多種多様な細菌が存在しています。細菌は有害な「病原菌」と考えがちですが、実際には細菌の多くは体の機能を正常に保つのに役立っています。プロバイオティクスの効果として、便秘および下痢症の改善、乳糖不耐症の改善、免疫機能改善による感染防御・アレルギー抑制、動脈硬化の予防、抗腫瘍作用などが報告されています。
代表的なプロバイオティクスにはビフィズス菌・乳酸菌などがあります。
ヨーグルト、納豆、味噌、漬物などの発酵食品に多く含まれます。
最後に
便秘にお悩みの方は、まずは食事を見直すことから始めましょう。
以下のような症状がある場合は大腸がんなどの腫瘍や炎症性疾患といった病気による便秘の可能性があるため、大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
・排便習慣の急激な変化
・血便
・6ヶ月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少
・発熱
・関節痛
・腹部腫瘤
・50歳以上での発症
・大腸器質的疾患の既往歴または家族歴
また、長年便秘で困っているが大腸の検査を受けられたことがない場合も一度受けて、がんなどがないことを確認すると安心です。
いとせクリニックでは便秘の治療、大腸内視鏡検査を行っていますのでご相談ください。