脂肪肝の分類
肝臓に脂肪がたまる状態を「脂肪肝」と呼びますが、脂肪肝にはアルコールの飲み過ぎによる「アルコール性脂肪肝(alcoholic fatty liver)」、アルコールとは関係なく食べ過ぎや運動不足など生活習慣による「非アルコール性脂肪性肝疾患(non alcoholic fatty liver disease: NAFLD)」に分けられます。またNAFLDには経過の良い単純性脂肪肝と、肝硬変や肝がんに進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎(non alcoholic steatohepatitis: NASH)があります。
新たな分類
変更の理由
先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議2023で、これらの名称が変更されることが発表されました*1。その理由として、”alcoholic”や”fatty”という単語が”飲んだくれ”や”太っちょ”という意味を含んでおり、患者の6割が非難されていると感じていることが挙げられています。
MAFLDとMASH
原因に関わらずすべての脂肪肝を表すものを”SLD(steatotic liver disease)”としました。また新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいと提案されました。“metabolic”とは”代謝性”という意味で、脂肪肝には糖尿病や脂質異常症、肥満、高血圧など代謝性の疾患が合併することが多く、MAFLDやMASHの定義ははこれらの代謝異常が合併している脂肪肝であることです。
MAFLDとNAFLDの違い
MAFLDとNAFLDは名前が変わっただけではありません。
NAFLDの定義は
① 脂肪肝がある
② アルコール摂取歴がない(エタノール換算男性30g/日以下、女性20g/日以下)
③ 他の肝疾患原因がない
でしたが、MAFLDの定義は
① 脂肪肝がある
② BMI 25以上(日本を含むアジアでは23以上)または糖尿病、または代謝障害があるもの全て
アルコール歴、他の肝疾患原因の有無は問わない
となっています。このためこれまでエタノール摂取量60g/日以上が診断基準であったアルコール性肝障害にもNAFLDにもあてはまらなかった、中等度の飲酒者もMAFLDに分類されるようになり、これらを特にMetALD(Metabolic alcoholic liver disease)としました。
その他の脂肪肝
脂肪肝のうち、NAFLDで代謝異常や原因となるような疾患もないものはcryptogenic SLD,薬物性,Wilson病などに起因する場合はspecific aetiology SLDと診断します。
日本では
以上は海外での動きです。日本でもこの新たな分類に沿って消化器病学会*2や肝臓学会*3が「NAFLD/NASH 診療ガイドライン」を改訂するとの声明を発表しました。今後はNAFLDやNASHではなく、MAFLD・MASHが使われるようになるかもしれません。
出典
*1: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37364790/
*2: https://www.jsge.or.jp/news/archives/733
*3: https://dx-mice.jp/jsh_cms/files/info/1328/20230929%E3%80%80oshirase62.pdf